小売販売について 第3回 クーリングオフ対応について
2/26配信の『氏名等の明示ルール』と4/27配信の『領収書の発行について』で、小売販売の一連の流れが確認できました。今回は愛用者シリーズの締めくくりとなりますが、販売後に返品の申し出があった場合の対応について確認しましょう。
<状 況>
第93回講座の解説のとおり、AさんとBさんのやり取りは法律上、訪問販売にあたります。訪問販売にはクーリングオフ制度がありますので、以下の適用条件を満たしていればご返金を行う必要があります。
<クーリングオフ適用条件>
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●契約書面[製品購入契約書(領収書)]をお渡しした日か、製品をお渡しした日のどちらか遅い方から起算して8日間以内であること
●返品を希望する製品が、未使用・未開封で破損等がないこと
※ 販売時に「この場でさっそく使ってみてよ」と言われたなど、開封・使用が誘導された場合も適用となります。
●その取引が、3,000円未満の現金取引ではないこと
<クーリングオフ対応の流れ>
① お客様に書面でクーリングオフの意思表示をしていただきます※ 指定の「製品購入契約書(領収書)」では、右下部がその記入欄となっていますので、お客様にこちらを利用していただくようお伝えするとスムースです
※ 提出方法について法律上の規定はありませんが、一般的に、書留郵便など受け渡しの記録が残る方法が推奨されます
② 書面を受け取ったら、クーリングオフ対象の製品についてお支払いいただいていた代金の全額を、速やかに返金します。
※ 受け取った書面はクーリングオフの証拠となるものですので、大切に保管しておきましょう。
③ お客様にクーリングオフ対象の製品を返品いただくようお伝えします。
④ ご返品の内容を確認し、完了となります
<解 説>
■クーリングオフの強制力についてクーリングオフとは、販売側にとって「受ける」「受けない」と検討、判断する余地はあるものなのでしょうか?
答えは、「NO」です。
クーリングオフは書面で意思表示することによって効力を発揮することになっていますが、書面を提出した時点で、販売者側はもちろん意思表示した本人ですら取り消すことができない強力な法的拘束力が生まれます。
そのため、正式なクーリングオフの意思表示を受けたにもかかわらず「もう少し考えてみない?」などと対応を躊躇すると、“クーリングオフを妨害しようとした”として違法行為とされてしまいかねません。十分に注意しましょう。
■独自ルールの対応はOK?
クーリングオフはあくまで法律で定められた消費者保護ルールですので、それを上回るレベルの顧客対応をすることはまったく問題ありません。
たとえば、訪問販売のクーリングオフ期間は8日間とされていますが、15日目にいただいたご返品の申し出を受け、返金して差し上げるといった対応を行うことは可能です。
その場合、前述のクーリングオフのルールは適用されませんので、「返品製品はどうするか」「返金額の計算はどうするか」など、お客様とよく話し合いましょう。
数回に渡って、小売販売にまつわる代表的なルールを解説してきました。
小売販売を活用したビジネス展開において忘れてならないのが、「自分は事業者 相手は消費者」ということです。自身にとっては「大好きな製品をお友達に分けてあげたい」くらいの気持ちであっても、法律と社会はそうは見てくれませんので、高いプロ意識とコンプライアンス意識を持ち、正しい販売活動を行うように心がけましょう。
シナジーワールドワイド
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